2006年 1月 3日 (火) 

       

■ 〈岩手競馬の再生は可能か〉柴田哲・県競馬組合管理者に聞く

 ■再生実行計画は、その実をあげているのですか。
  柴田 今年度は大部分仕込みの年だと思っています。インターネット、街中場外、民間委託という仕込みの部分ではほぼ予定通りできたと思っています。

  ■計画では平成17年度に、財産処分などで17億円の特別利益を出して単年度4億円の黒字を見込んでいます。
  柴田 資産売却もかなり進んでいますので、結論から言いますと黒字化は図れると思います。実は11月の半ばから売り上げの減少が非常に大きい。11月の頭までは計画値99%ぐらいまでいったんですが、12月になってから悪天候で途中やめてしまうとか、お客さんの出足も非常に厳しい。4億いくかどうかという部分に関しては(まだ言えないが)、ただし黒字化は図れるだろうと思っています。

  ■18年度にはJBCの開催で17億円の売り上げを見込んだ計画を立てているわけですが、それがなくなっても1億円の黒字という計画達成は可能ですか。

  柴田 JBCに代わるもの自体は実現できないと思いますが、開催の日数の増加とか、グレード競走というものを招致できないか、検討している。

  ■JBCの誘致合戦に負けた理由は何だと受け止めているのですか。
  柴田 われわれは17年度開催も実は手を挙げた。そのときに言われたのは賭式の問題だった。3連複、3連単ができないということですね。今度はそれができるから問題ない。スプリント(1200メートル)とクラシック(2000メートル)をやれるのは岩手と大井だけです。当然、大井との対決になると思っていたわけですが、(委員から)スプリントじゃないといけないという理由はないじゃないか、2日間にわたってもいいじゃないかという意見が出ました。結局、われわれが落ちた最大の要因は売り上げ規模でした。われわれは21億円を提案した。川崎は41億円を挙げた。大井でさえ36億だったんです。今年の名古屋は18億です。41億という数字が是か非かという議論はまったくない。じゃ、われわれが41億円という数字を挙げたら取れていたのかという議論はあるわけですが、われわれは委員の方々に対する招致運動が不足していたということでしょうね。

  ■年度末には再び50億円の緊急融資を受けなくてはなりません。計画を達成できない場合には議会の理解を得られるのは難しいと思うんですが、見通しは持っていらっしゃるんですか。

  柴田 今年度はかなりの部分で仕込みの年なんですね。仕込みができるかどうかというところで総合的に判断してもらいたいんですが。売り上げは今落ちています。追加開催を農水と協議していまして(12月27日に追加開催決定)、それで維持しようかと思うんですが冬場はコストがかかるんですよね。黒字にはなるでしょうけど前の段階での落ち込み、4億という数字自体はちょっと厳しいと思います。そこの部分で議会が確かに厳しい判断をしてくるというのは想像がつきますが、来年に向かっての仕込みの部分がどれだけ実現したのかということを合わせて判断いただきたいと思っている。

 ■国の地方共同法人化案についてはどう受け止めますか。

  柴田 地方競馬はそれぞれが借金を抱えているんですね。抱えていないところもあるわけですけど。その前段の部分がクリアできるならともかく、実質的に開催権というものを任せてもらえないものではわれわれは乗れないんじゃないかと思います。地方共同法人というのは地方が出資する形態ですからね。結局、地方共同法人でできた損益の部分は地方の負担、その前段にある財務状態もお前たちの問題だと、両方ともそういうことなら乗れないと思います。

  わたしどもだけではなく全国地方競馬協会は、行革の参与会に対してどういう組織になろうとも、実質的な経営権だけは認めてくれという要望書を10月31日に出しています。(地方競馬全国協会を新組織にするという計画は)来年の末か、再来年に法律化されるそうですけれども、そこまでにどうなっていくのかと思います。11月の参与会の報告では、そこのところが企画調整というように少し言葉が柔らかくなってきている。

  で、借金もともどもということなら開催権も含めて委託するということに賛同できます。しかし借金は自分たちで返せというのなら、その解消手段をわれわれは他人にゆだねることになる。

  ■大井のようなところでは、自分たちでやれると思っているから一緒にはなりたくないでしょうが、高知のようなところでは参加したいと思うのではないでしょうか。

  柴田 大井も去年40億近い赤字を出してます。ただ彼らは剰余金を持っていますから分かりませんが。県が直営しているところ、金沢と北海道ですが、これは過去の債務というのが地方自治体の財政の中に隠れてしまっている。高知はいったん赤字をチャラにしていますよね。そういうところは乗りうるのかもしれません。しかしわれわれみたいなところが乗り得るような案ではないと思っています。

  ■高知のように借金をいったん全部税金で肩代わりして借金ゼロにして出直すということにしても、メリットは利子分がなくなるというだけで、むしろ税金投入によって岩手競馬存続への県民の理解はかえって得られなくなるのではありませんか。

  柴田 295億に対する利子分の損益では年間8億円ぐらいですね。ただ、元本の部分では295億ありますので、これをもし肩代わってもらえるなら、295億のリスクは岩手県全体、構成団体全体にとってなくなるのですね。そのリスク回避というメリットは大きいと思いますけど。

 ■ネット発売のことなんですが、既にD−netという仕組みがあり、ジャパンネットバンクを通じて即日入出金もできるという中で、あえてソフトバンクを選んだ理由は何ですか。

  柴田 D−netさんは投票手段のハードとして持っているだけです。ソフトバンクと一緒になってやるという決断をしたのは、ハードとしての手段ではなく、プロモーションの部分でより多くのものを提供していただけるだろうし、われわれと一緒にやっていけるだろうと判断した。期待と魅力を感じた。基本的なコンセプトとして、彼らが目指すのは底辺人口の拡大であるという。そこがまったく一致するんですね。そのためにどういう仕掛け、仕組みを作っていくか、プロモーションするかということなので、われわれは事業としての広がりを十分考え得るということです。

  ■ソフトバンク発売での売り上げはかなり見込めるという自信は持っているわけですか。

  柴田 それは持っています。ただし、われわれ単独でやるというのと、今D−netが一緒にやりたいと言ってきましたので、単独でやるよりもダウンすると思います。ただ初年度の計画は10億ぐらいですのでそれはどういうやり方をしても可能だと思います。

  ■仮にそういう状況になると、日本の競馬というのはJRAと南関東のSPAT4と、それからソフトバンク競馬とネット上では3つに分かれることになりますね。それは予想していた図なんでしょうか。

  柴田 最終的にはどうなっていくか分かりませんが、わたしの見通しで言えば大井さんもソフトバンクに入ってこざるをえないと思います。大井さんはライブドアとか楽天とかで話をしているんだと思うんですが、そことやっているのは電話機の代わりにインターネットを使うだけなんです。お客さんを呼び込むためのさまざまなソフト、プロモーションを行えるか、中身の善し悪しが大事になります。既存の客数でもソフトバンクと他では規模が違います。楽天は最近増えたといっても500万ぐらいだと思います。ヤフーの場合は3千万強だと言ってます。それからITテレビですね。それらを考えると大井さんも、スタート時点では入らないかもしれませんが、いずれは入ることになると思います。

  ■ソフトバンクもそうですしJBCもそうなんですが、岩手競馬と南関東とで競争関係にあることが明確になってきたと感じるんですが。

  柴田 その通りだと思います。自分たちの4場のために、大井さんは後楽園に持っていた場外発売場を昨年10月から船橋、川崎、浦和にも開放していますね。明らかに自陣営の関係を強化していってます。

  ■大井は高知とか北海道とも馬券発売で提携をしていますね。地方同士の競争をどういうふうに受け止めるのか。ソフトバンクで競馬を始めるときに、今度は岩手競馬をその中から選んでもらう必要が生じるわけですが。

  柴田 インターネット上で言うんなら、選んでもらうプロモーションが必要だと思います。それから、われわれはよそさまより半歩ずつでも先に取り組みうるような方法論を進めていかないといけないと思います。イギリスで馬券を販売するとか、街中場外でも人を滞留させるのではなく自販機が2台、3台だけの簡便な形で展開するとか、他の競馬場との本当の意味での共同場外、新たな設備を作るのではなく設けるとか、今の法律の中でやれるところをやろうと思っています。

  もう一つは、農水に法律改正の提案を投げかけているんですが、馬券というものに違う形の付加価値をつけるとか。馬の質とかレースでは大井さんのほうが上ですからね。そこにわれわれも追いつかなくてはならない。違う部分で力をつけて、そこを同じようにしていければ。

 ■いい馬を集めるには、賞金が高くないと集まらない。現在の賞金水準についてどうお考えですか。

  柴田 ええ、確かに低いと思います。今のままでは馬をとると大井との距離が遠のいていくと思います。ですからいずれ上げなければならないと思います。

  ■平成14年度の数字なんですが、報償費が岩手は42億、大井が118億。千葉35億、埼玉25億、佐賀21億という数字です。大井とはかなり差がありますね。ここからかなり下がっているんですね。

  柴田 今年27億ぐらいだと思います。

  ■馬主会でもギリギリだ、調教師会でもギリギリだと言っています。来年度はこの賞金水準は維持するお考えなんですか。

  柴田 はい、下げるつもりはありません。計画通りいくんなら19年度には改善しなければいけないと思っています。19年度からは多少改善を見込んでの計画です。

  ■賞金を上げるには売り上げを上げないといけない。来年度のJBCの代わりに交流重賞を増やしたいと、この前の競馬議会でも言いましたけれど、見通しはどうなんですか。

  柴田 極めてきついですね。中央の交流重賞というのは、JRAさんが意思を持って、賞金の半分を負担する。JRAさんも売り上げが落ちてまして、そのパイをずっとしぼめてきているんですね。それをみますと、今までの感触では難しいと思います。

  ■となると、新年度には新規にどういう取り組みをやっていくということになりますか。

  柴田 岩手競馬としては、破格な値段の馬が入ってくる可能性があります。話題性としても大きいのでぜひ実現させたいというのとそれと可能なら賞金の高いレースを催せないかと考えています。通常の重賞なら賞金2、300万円ですよね。それとケタの違う額のレースを催せないかと。ただ創設したときに、それにふさわしい馬、中央の馬とかが出てくるかどうかということが問題ですね。


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