2006年 1月 3日 (火) 

       

■ 〈岩手競馬の再生は可能か〉城地藤男・調教師に聞く

 ■岩手競馬の賞金が下がりましたけれども、現場はどういう実感なのでしょうか。
  城地 全盛期からすればすっかり半分になっているね。

  ■年間で厩舎を維持するのにどれぐらいのお金が必要ですか。厩舎によっても違うでしょうけど。
  城地 厩務員の給料まで含めてのことですよね。正確なところは税理士さんに聞かないといけないけど、それは何千万ですよね。飼料代から給料でしょう、それぐらいは必要ですよね。

  ■収入というのは預託料ということになりますよね。
  城地 うん、それと進上金ね。進上金は年間平均して500万円前後ですか。でもうちはいいほうですよ。それから諸手当が300万円ぐらいかな。それで800万ぐらいになる。1千万となったらすごくいいほうですよね。このほかに預託料が入って、給料と飼料代、わら代を出さなきゃならない。

  ■岩手は05年度に預託料を下げましたよね。
  城地 1万円下げたんです。これはわたしの案でやったんですけど、そうしなかったら、馬主会もたいへんだったろうと思います。みんなからはつるしあげくったけれども、まず下げようじゃないかということになった。なんとかここを乗り越えなきゃだめだし、競馬を潰してはだめだし、馬主だって馬を使ってもらわないといけないから。これがギリギリですけどね。

  ■それが功を奏したんですね。
  城地 そう。出走手当も1万円上げてもらえることになったから、それで何とか馬を確保できるようになったね。実は、新年会(去年)で花巻温泉に泊まったとき、わたしと馬主会の会長が副管理者をつかまえてしゃべったんですよ。出走手当を上げろって。相当頑張ったんだけどね。

  ■馬房数は平均で20馬房ぐらい。それがほぼ埋まっているんですね。
  城地 そうです。埋まっている。

  ■預託料は月額16万円でしたか。
  城地 いや15万7500円。15万円に消費税ですから。

  ■つまり16万円が15万円になったということですね。
  城地 そうです。

  ■厩務員は何人いるんですか。
  城地 うちは8人ですね。それに乗り役(騎手)が1人。前は厩務員1人3頭(担当)持ちという決まりがあったんですが、その規制を外してもらったから今は4頭持ちになってる。

  ■賞金も預託料も下がって、厩舎経営をやりくりするには人を少なくするしかない。厩務員さんが8人もいるというのは多いほうじゃないんですか。

  城地 ところが4頭持ちじゃ仕事やっていけないんですよ。間に合わないんですわ。3頭持ちでも忙しいぐらいですからね。うちの場合は3頭持ちにしたほかに乗り役が1人いるから、平均したら2・8頭持ちぐらいになる。これがいっぱいいっぱいです。

  ■走った馬が賞金をもらえば、その中から騎手に5%、厩務員に5%の進上金が入りますよね。
  城地 水沢はその馬の担当厩務員がもらえるような担当制だけれども、盛岡はプール制をとってる。全部集めて均等割にしている。だから、手入れは手入れ専門、乗るのは乗るの専門と分けてやれる。

  ■預託馬が少ない厩舎は経営が大変だということになりますよね。
  城地 うん。そういうところは厩務員を減らしたりということになりますかね。でも、出走手当を上げてもらってからだいたい埋まるようになったんじゃないかな。今1出走は9万5千円の出走手当に5千円の着外賞が出るから10万円になる。それまでは1万円低かったから、月に2回走っても18万円にしかならない。18万円ではたいへんですよね。預託料の15万7500円と、そのほかに獣医代と鉄代(装蹄代)が必要なんですよ。それと共済金が5千円引かれる。それが2回走ると1万円ですよね。それから厩務員のボーナスが1千円ある。去年までは1500円積み立てしていたが賞金が下がったので500円下げたわけ。それが調教師の分もある。それが引かれるからね。

  ■預託料を引き下げていなければ、馬主側の持ち出しが増えて。
  城地 そう。預託料を引き下げて、出走手当を上げてもらって、それで馬が集まるようになったかな。

  ■連闘で毎週1回走れば、逆にプラスになりませんか。
  城地 C3(級)の馬はプラスになるんですよ。出走手当が7万5千円ですから着外賞と合わせて1回8万円になる。毎週なら月に4回走ることになるが、抽選漏れで出走できないことがあるから、月に3回走れば24万円の収入ということになる。これはプラスになる。だから2回遣いの馬は馬主にとっては貴重なんですよ。

  ■ファンの側からしてみると、どうやっても勝てそうもない馬が走っているのはおかしいんじゃないかという声もあるんですけど。

  城地 ファンはそう感じるんだろうが、これには賞金の格付けの問題もあるんです。例えば、ほんとはC3くらいの能力しかないのが、前の格付けが消えないためにオープン(級)で走っている馬がいる。これでは明らかに着も拾えないということは誰でも分かりますよね。岩手の場合、格付けは過去20回の出走での賞金に従って行われているんで、2歳、3歳のときに賞金をとっちゃったというような馬はそれから20回走らないとクラスが下がらない。ほかでは2年間の賞金しか見ないとか、競馬場によって基準はいろいろなんですけど、年が替わって格付け条件をクリアしてC3級に降級になれば、その馬は今度は勝てるわけです。 

■中央と地方とでは、預託料が3倍ぐらいの差になっている。預託料の差に見合うほどの技術の差というのはあるんですか。
  城地 いや、技術の差はないと思います。わたしはむしろ、地方のほうが技術はあると思います。馬を壊さないようにもっていく技術というのは地方のほうがずっと上ですよ。

  ■馬主サイドによると、地方では賞金が安すぎてとても黒字にならない、中央では赤字にさせないようにしてくれている、という声も聞かれます。馬主に損をさせないような工夫が中央ではされていると言っているんですが。

  城地 いや、それは逆でないかな。中央でやっている馬主さんは、そりゃオープン馬とか持っている人は別だけれども、普通の人は倒産しちゃうよ。だってコストが高いんだもの。こっちに未勝利で来ている馬がいるでしょ。その馬は岩手で連勝街道を行ってるんだよ。でも中央だったら着も拾えない。それだけ中央は壁が厚い。馬の値段がいくらするかと言えば中央の馬は1千万円以上なんですから。それが賞金ゼロでこっちにやってくる、馬主さんに損をかけないということは絶対無いね。地方のほうが馬主さんに損をかけてないということなんだ。

  ■地方の競馬のほうがリスクは小さいというメリットがあるということですね。
  城地 そうですよ。大いにあります。馬の費用は出走手当で間に合うでしょ。中央の場合は1カ月に1回しか走らないし、35万円の出走手当もらっても預託料は実際には60万から70万いきます。半分赤字じゃないですか。こっちは2回使っている馬がばんばんいるじゃないですか。中央は3回使ったら次は牧場ですからね。

 ■中央と地方とでは、預託料が3倍ぐらいの差になっている。預託料の差に見合うほどの技術の差というのはあるんですか。

  城地 いや、技術の差はないと思います。わたしはむしろ、地方のほうが技術はあると思います。馬を壊さないようにもっていく技術というのは地方のほうがずっと上ですよ。

  ■馬主サイドによると、地方では賞金が安すぎてとても黒字にならない、中央では赤字にさせないようにしてくれている、という声も聞かれます。馬主に損をさせないような工夫が中央ではされていると言っているんですが。

  城地 いや、それは逆でないかな。中央でやっている馬主さんは、そりゃオープン馬とか持っている人は別だけれども、普通の人は倒産しちゃうよ。だってコストが高いんだもの。こっちに未勝利で来ている馬がいるでしょ。その馬は岩手で連勝街道を行ってるんだよ。でも中央だったら着も拾えない。それだけ中央は壁が厚い。馬の値段がいくらするかと言えば中央の馬は1千万円以上なんですから。それが賞金ゼロでこっちにやってくる、馬主さんに損をかけないということは絶対無いね。地方のほうが馬主さんに損をかけてないということなんだ。

  ■地方の競馬のほうがリスクは小さいというメリットがあるということですね。

  城地 そうですよ。大いにあります。馬の費用は出走手当で間に合うでしょ。中央の場合は1カ月に1回しか走らないし、35万円の出走手当もらっても預託料は実際には60万から70万いきます。半分赤字じゃないですか。こっちは2回使っている馬がばんばんいるじゃないですか。中央は3回使ったら次は牧場ですからね。

 ■今回、国が地方競馬の集約化ともとれる地方共同法人化案を示しました。日程を調整して、競走の実施も受託すると書いてます。どう受け止めていますか。

  城地 言っていることは分からないわけではないんだけれども、そう簡単にはできるもんじゃない。各競馬場にそれぞれ番組の作り方、やりかた、ルールというものがあるわけで中央と同じように一律にやるというのはできないんじゃないかな。各競馬場をわたり歩けるといったって輸送賃もかかります。大井と同じ賞金と出走手当が出せるのかということですよね。岩手から九州に出走させるには輸送賃が1頭60万から70万円かかるんです。その経費を賞金で賄えますか。高知で一番強い馬でも岩手で走ったらオープンでは勝負にならないでしょ。高知から岩手まで運賃が50万円です。岩手の25万円の賞金を狙ってやってきますか。馬資源の有効活用とか言ったって、地方ではそんなことできないですよ。

  ■ソフトバンクで来春からネット発売するんですが売れると思いますか。

  城地 銀行の支店長と話をすることがあるんだけど、競馬場に来ていると、なんだ支店長、と知り合いから言われるんだって。だから自分の家で買うんだって。だからインターネットは売れると思うよ。

  ■C3のレースでも売れますか。

  城地 ファンの方は、毎週出走手当を目当てに使うような感じでC3のことを言うけれども、C3はC3でいいところがあるんです。例えば丈夫な馬でなかったら週1回使えない。また追い切りも要らない。だから馬券の狂いもない。強い馬はちゃんと走る。計算できる馬なんです。プロから言わせたら、こんな堅いレースはない。安心感がある。丈夫じゃない馬というのは毎週使えないです。

  逆に1回遣いの馬というのは、レース3日前に追い切りをかけなきゃいけない。ちゃんと追い切れればいいけれども、必ずしも騎手が乗るわけではないから、中には体重が70キロもあるやつが追い切ることもある。走りすぎたり疲れたりすることもあるわけだ。それで本番で力を出せなかったりすることもあるわけだ。牝馬なんかは一生懸命走りすぎてレース以上の追い切りになってしまうこともある。

  そういう心配がない2回遣いの馬は貴重なんです。ファンは面白くないというけれども、われわれは一番面白いレースだと思っている。丈夫な馬だからこそ、1週間に1回使えるんであって、だからこそ強い馬は勝つんですよ。


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