2006年 1月 8日 (日) 

       

■ 〈盛岡百景〉52 上田深沢線からの姫神山

     
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  高いビルの増えた盛岡市の中心部でもビルの谷間、道路や川の延長線上に、ふとなじみ深い山が見え心を躍らせられることがある。例えば、真冬のよく晴れた日、国道4号バイパスを上堂方面に下っていくとき、目に飛び込む雪に覆われた岩手山。ほかの季節より雄大さを増して迫ってくるようにすら見える。雫石川の堤防道を歩いているとき、早池峰山の頂を望めたときも気分はいい。

  「上田深沢線からの姫神山」も街中から山を望む風景の一つだ。姫神山は玉山村に所在する標高1124・5メートルの山。市内の各所から見える山だが、ここでは緑が丘方面へ、なだらかな上り坂となり、正面の遠望には滑らかな稜線の姫神山だけが目立つ。

  姫神山は玉山村を象徴するような山。花こう岩の残丘で、この辺りから産出される石は良材となっている。古くから玉東山筑波寺を中心とした信仰の山。坂上田村麻呂が霊山として観音立像を建立し、姫神山を姫神権現として国家鎮護の神としたとされ、前山に神山寺、筑波寺を建てたという。修験場となり、山頂には本宮神社とともに熊野神社が祭られていた。現代では身近な登山コースとして愛されている。

  姫神山と岩手山は夫婦だったという伝説は聞いたことがあろう。岩手山に嫁入りした姫神山だが、あちこち遊び回る岩手山に頭を悩ませていた。ついに堪忍袋の緒が切れて、召使いのお仙を道案内にし て里に帰った。

  帰ってきた岩手山が姫神山を呼んでも返事はなく激怒。お仙を取り押さえ姫神山を逃がした罪で首をはねた。岩手山はこれで女に恐れられることとなり、女神の住まない山となった。別れた姫神山は独り、機織りを続けたという。  

  夫婦伝説にはこんなの話も。岩手山に縁を切られた姫神山を早池峰山が面倒見て良い仲になった。すると岩手山がねたんで、姫神山を奪い返し、岩手山と早池峰山に因縁ができたという三角関係の話だ。

  上田深沢線は交通渋滞対策で中央線を時間帯で動かすようになった。道路をまたいで標識が設置されたため、かつて見た姫神山の眺望ではなくなった。10日には玉山村と合併して新盛岡市がスタートする。姫神山を望む盛岡百景候補には事欠かないだろう。
(井上忠晴記者)

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