2006年 2月 1日 (水) 

       

■ 〈四季逍遥〉134 下斗米八郎 スイセン

 房総から送られたスイセンを、知り合いから分けていただいた。
  スイセンは家内も好きな花で、毎年、年の瀬に買い求め玄関に飾って新年を迎えるのが、いつからかわが家のならわしになっている。

  家内は年を越して咲く玄関のスイセンと、いただいたスイセンを合わせて大きな壺(つぼ)に入れて眺めたり、横長の花器に生けたり、小瓶に分けて挿したりしてスケッチを楽しんでいる。

  スイセンは地中海沿岸が原産地で、古い時代に中国を経て渡来したもので、関東以西の海岸に野生化してニホンスイセンとも呼ばれている。

  伊豆急下田駅からバスで15分ほどの岬にある爪木崎海岸や福井の越前岬、淡路島南岸の斜面のスイセンが日本三大群生地として有名である。当地でも4月になると芽が出てさほど日をおかずに花をつけるが、暖地では12月から2月にかけて咲く花である。

  数年前に訪ねたJR内房線の安房勝山から千倉方向に入った水仙ロードには、約3キロにわたり沿道の両側や集落の庭や、近くの畑地に白いスイセンが咲き広がっていた。その鋸南町では、年間800万本のスイセンを出荷すると聞いて驚いたものだった。

  また、館山市から白浜町にかけての房総フラワーラインにも、菜の花やポピーに混じってスイセンの花が青い海原を背景に咲き続いていた。

  ルーペでスイセンをのぞくと、6枚の花弁は下部で重なるように合着し筒状になっている。中心に盃(さかずき)状の黄色の副冠があり、なかに黄色の糸状の雄しべが3本、盃の底に玉状の雄しべが3個ついている。雄しべの真ん中に雌しべのようなものがあるが果実は結ばない。花は5、6個房状につき横向きに開く。

  スイセンは園芸種が多く、八重咲きや花弁が黄色のものや副冠が白いもの、ラッパ型のものなど多彩である。スイセンはスイセン属の総称として使われる場合があるが、単にスイセンといえばこのニホンスイセンのことである。

  ギリシャ神話に、水に映る己の姿に恋して死んだ美少年ナルシスの悲話があるが、誰でもどこかにうぬぼれや自分をひいき目に見る気持ちがあるのではないだろうか。それが若者の特権であるが、時には幸運を招くこともあり悲劇を生むこともある。

  今年のように、ことのほか雪が多く寒さの厳しい冬は、春を待つこころもひとしおである。

  雪に埋もれた家の中で、スイセンは清楚(せいそ)で凛(りん)とした白い花を開き、寒さにめげずに春の日差しを待っている。

  夜は寒さをさけて寝室に持ち込むのだが、深夜、花と花がつぶやきあっているように、芳香がときどき顔の上を流れていく。






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