2006年 2月 1日 (水) 

       

■ 〈賢治の歌〉299 望月善次 蒼溟の光はとわに

 蒼溟(あをうみ)の
  ひかりはとはに明滅し
  ふねはまひるの
  知多をはなるる
 
  〔現代語訳〕青々とした海の光は、永久に明滅して、船は真昼の知多半島を離れるのです。

  〔評釈〕「歌稿〔B〕」の「大正五年三月より」八十四首中の八首目で「263」歌。初句には「青うみの」の形もあった。解字的には「溟(めい)」は、「さんずい+冥(暗い)」で「暗い水」が原義で、海の意味となる(ちなみに、「海」も「さんずい+毎・晦(暗い)」で、「暗い水」であるから、解字的には似ていることになる)。話者の感慨を直接的な形で明示しないところが、賢治短歌の特徴の一つであることは再三にわたって述べているところだが、抽出形においても、この傾向は変わっていない。この中立的な話者の姿勢をどう評価するかは、賢治短歌をめぐる重大な問題点であり、そこに明示されていない話者の感慨を伝記的事実によって(のみ)埋めようとする「誘惑」が忍び寄ることにもなる。
  (岩手大学教授)






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