公園にやってきた、男の子と、お父さん。男の子はお父さんに、木になって、とせがみます。で、お父さんは、「木」に。…ところが「お父さんの木」に登ろうとした男の子、うまく登ることができません。助けを求めるかのような「どうやってのぼるの」という問いかけに対して、お父さん、心の声で応えていわく、
(きは なんにも いわないの。)
やがて男の子は自力で木に登り、「お父さんの木」は無言のまま、その枝で息子の体重を支えます。木の上から、これまでとは違った目線で世の中を見る男の子の表情の、晴れやかさ。そして「お父さんの木」は、男の子が虫に驚き、鳥に目を見張るときも、枝からこわごわと降りるときも、黙って、かれが自分で考え、決断し、行動するのを見守るのです。
広げた枝葉でこどもを守りながら。こどもが自分と肩を並べ、やがては乗り越え巣立っていくときを感じながら。父と子の絆(きずな)をすがすがしく描いた、静かな感動作です。
【今週の絵本】『きはなんにもいわないの』片山健/作、学習研究社/刊、1260円(税込み)3歳〜(2005年) |