昭和52年は、円高による景気の落ち込みを懸念するマスコミの報道にもかかわらず、思いのほか輸出が順調な伸びを見せ、国民も海外旅行に出て円高の恩恵に浴すのでした。
そんな昭和52年4月、『旅の手帖』を持って旅に出かけよう。本誌に掲載された場所で提示すれば特典に預かる。と宣伝する、旅行総合誌『旅の手帖』(B5判、162ページ)が、公済出版社から創刊されました。時の国鉄さんもこれを後押しするというのです。
この時代の旅行ブームは、京都など有名な観光地が中心でしたが、『旅の手帖』もその「京都」です。
冒頭のグラビアは、「春らんまんの京都」「西陣織は今」「秘められた京の美をたずねて」と、カラーで写し旅情を誘うのです。
特別企画も「歩いて見つけよう京洛365日」というもので、例えば、銀閣寺から哲学の小路、そして清水寺への道を、地図と解説で案内するのです。
これに、京都の年中行事、寺院、名産などを網羅した小百科「京都春夏秋冬」を10ページにわたって載せて、さらに「京の民宿」「京都通信」「四月の都おどり」「花の京都」と、雑誌の半分を京都が占めるのです。
そうなると不思議なもので、京都以外の所へ…、という心理が働くのです。
そこでもう一つの特集は「ライチョウに逢いに、立山、黒部アルペンルート」が、ダイナミックに迫ってくるのです。早春の越中五箇山、春霞む安曇野、黒部湖の展望、そして双体道祖神が、手を取り合い肩を抱き合って優しく招くのです。
なるほど、これが興味を喚起する旅行雑誌の編集なのでしょう。また、総合旅行誌を標榜するだけあって、新しい旅を発見する編集にも工夫が見られます。
海辺に生きる平家の末裔を探る、早乙女貢の連載紀行「落人の里、三重県南島町」もその一つです。
連載推理小説に、笹沢左保の「まぼろしの旅路」、民話の旅に、立原えりか「黒部、蛇と結婚した娘」と読み物もそろえました。
「トラベル情報」に「18才未満おことわり」とありました。何のことはない全国各地の有名な金精様や陰陽石のレポートです。この少子化時代、万物を生み増やす神として国民こぞっておおらかに、あがめ奉りたいものです。
(毎週日曜日掲載)
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