2006年 2月 7日 (火) 

       

■ 〈英語ってどうなってんの?〉90 成田浩 あなたとともにここにあり

 I saw the bear near my house.「わたしは家の近くでその熊を見たよ」。これに対して「それはどれくらいの大きさだったの?」と聞く場合の「それ」itはその熊のことを指しています。もし、その熊が雌だということがすでに判明していれば、もちろん「彼女」sheで受けますね。変ですけどそれが英語でしたね。念のため。

  さて前回のitを少し補足しておきます。It’s very cold this morning.は天候、気温を、It’s winter now.は季節を、How far is it to the community center?は距離を、It is (has been) 64 years since Pearl Harbor.は時間を、それぞれ指すというものでした。
  これらは「それ」という日本語に訳すことはできません。「それは今朝はとても寒い」なんて言いません。「今朝はとても寒い」でよいのです。暦の月日自体には温度はありませんから、寒暖を表すために何か他に主語が要るのでItを置くのです。

  WeとYouにもわたしたちには不思議に感じるものがあります。わたしたちは目的地に着いた時「さあ、着いたぞ」などと言います。これがHere we are.です。「ここにわれわれは居るぞ」という発想です。

  ここでも注目したいのはweと言っていることです。これは仲間と一緒に着いたんだと言っているのです。着いたのはIではなくてWeなのです。そんなこと分かっていることなのに「わたしたちは」と、いちいち何か主語を言葉に出しているのです。

  もう一つ、いま探し物している人がいるとします。友達がそれを見つけて「ほら、ここにあるよ」と教えてあげます。こんなとき英語は、Here you are !です。何だこれは?逐語訳をすると「ここにあなたは居る」です。

  懸命に探し物をしている人に対して「何をトンチンカンなこと言ってるんだ」と思ってしまいます。でも、その心は「あなたはその探し物と共にここに居るではありませんか」と言っているのです。ああ、何としたことか。(言語人文学会会長)

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