2006年 2月 7日 (火) 

       

■ 〈賢治の歌〉305 望月善次 別れたる鉱物たちの

 わかれたる
  鑛物たちのなげくらめ
  はこねの山の
  うすれ日にして
 
  〔現代語訳〕別れた鉱物たちは嘆くでしょう。箱根山の薄日のもとで。

  〔評釈〕「歌稿〔B〕」八十四首中の十三首めで、「269」歌。「歌稿〔A〕」では、第二句の表記は「鉱物たち」となっていた。「別れ」の対象としては、単独作品として見た場合には、「話者たちと鉱物」の場合と「鉱物たち同士」の二つの場合との可能性があろう。昨日取り上げた「輝石たち/こゝろせはしく別れをば/言ひかはすらん函根のうすひ。」に続く作品だとして連作性を強調すると、「鉱物」は、「輝石」のことで、「こゝろせはしく」別れを言い合った「輝石(鉱物)」たちは、(そうしたあわただしい別れの在り方などを)嘆いているということになる。いずれにしても、「鑛物〜なげく」は、結合比喩(ゆ)で、無生物の「鑛物」を「なげく」とせざるを得ない話者がいることが肝要な一点である。
(岩手大学教授)

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