2006年 2月 7日 (火) 

       

■ 〈夜空に夢見る星めぐり〉149 八木淳一郎 土星と賢治

 天界の人気者土星は、いよいよこれから観望のシーズンに突入します。今はかに座のまっただ中、プレセペという名の星団の近くに位置しています。双眼鏡や望遠鏡のレンズをのぞくと、視野の中でプレセペの星々の群れの明滅と土星の輝きが美しいハーモニーを奏でています。望遠鏡の倍率を少し高くしてみますと、プレセペ星団のたくさんの星とともに土星の輪がくっきりと見え、その美しさにため息が出るほどです。

  土星の輪は15年の周期で傾きが変わります。土星の輪は非常に薄いので、地球に対して真横になる年には輪が全く見えなくなってしまいます。

  今シーズンの輪の傾き具合は、いかにも土星らしさを感じさせるもので、一度望遠鏡のレンズを通してご覧になることをおすすめします。

  ところで土星の輪は1枚ではなく、外側から内側に向かってA環、B環、C環で構成されています。そして輪の間にはすき間があって、A環とB環の間にあるものはエンケの空隙(くうげき)、B環とC環の間のものはカッシーニの空隙と呼ばれています。

  口径が5センチくらいの小さな望遠鏡でも優秀なレンズであればカッシーニの空隙を見ることができます。口径が大きくなるに従ってより鮮明に細かなところまで見えるようになり、コントラストもついてきます。また高い倍率をかけることができて、黒々としたすき間の様子を初めての人でも容易に確認できるようになります。

  ただエンケの空隙を見るには、大きな口径と優秀な光学系、輪の開き具合など種々の条件に加え、見る人の熟練度もかかわってきます。ほかにも大きな望遠鏡では土星本体にしま模様が見え、突発的に出現する白斑と呼ばれる模様をとらえることもあります。さらに土星の周りには何個かの衛星を見ることができます。

  土星を見たほとんどの人がその美しくも神秘的な姿に胸打たれます。なぜこのような輪ができたのかという不思議。否、それよりも土星が暗黒の空間にぽっかりと浮かんでいるのを目の当たりにしたとき、人は、人も地球もとても小さくて、だからこそ慈しむべきものなのだということに思いをはせる不思議。なにか賢治の世界を理解する糸口にもなるような気がします。

  わたしたちの誇りである賢治も夜ごと星空をあおぎ、思いを巡らせてさまざまな作品を著したのでしょう。子供たちやわたしたちにも書物や作りものだけでなく本物を見ることが不可欠なのです。きっと星の世界から賢治もそのことを願っているに違いありません。
(盛岡天文同好会会員)

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