2006年 3月 3日 (金) 

       

■ 〈賢治の歌〉328 望月善次 北上は雲の中より

 北上は
  雲のなかよりながれ来て
  この熔岩の臺地をめぐる。
 
  〔現代語訳〕北上川は、雲の中から流れ来て、この熔(よう)岩の台地をめぐるのです。

  〔評釈〕「大正五年三月より」〔『歌稿〔B〕』〕八十四首中の三十首目で「281歌」。結句の「臺地」は、「歌稿〔A〕」では「台地」。第四句の「熔岩」の「熔」は、「鎔〔(金+容)で、『金属の鋳型に入れる』の意。〕」の俗字。現在、普通に用いられる「溶」は、「水+容(わきあがる/ものを集めておおう)」で、「水勢が盛んな様」を示す文字であるから、語源的には異なるものであったが、現在では、同じ意味となっている。「北上」は、もちろん「北上川」の意味。初句「北上は」の表現は、当地の人々がそう呼んでいたからにもよるが、短歌の上からは「キタカミ」と四音であったことも無視できない要素となる。「雲のなかよりながれ来て」は、賢治の「見たそのまま」かも知れぬが、十分に賢治的でもある。
(岩手大学教授)



本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします