2006年 3月 4日 (土) 

       

■ 〈賢治の歌〉329 望月善次 きょうよりぞ分析始まる

 今日よりぞ
  分析はじまる
  瓦斯の火の
  しづかに青くこゝろまぎれぬ。
 
  〔現代語訳〕今日から、いよいよ「分析化学」が始まりました。瓦斯(がす)の火が静かに青く燃えて、(鬱屈=うっくつとしたわたしの)心も紛れるのです。

  〔評釈〕「大正五年三月より」〔「歌稿〔B〕」〕八十四首中の三十一首目で「282歌」。第四句の「しづかに」は、「歌稿〔A〕」では「静に(ママ)」の形。「分析」は、当時の盛岡高等農林の二年次科目の「化学分析」のことであろうか。(よく知られている「盛岡高等農林学校、化学実験室」の写真もある。)〔『新校本全集』の「写真三四」、第十六巻(下)補遺・資料 補遺・伝記資料篇、p298。〕一首全体は、冒頭二句で大まかな事実を記し、第三・四句で、その中核をなす「瓦斯の火」の様子に触れ、結句において、話者自身の心情を吐露する形となっている。「只事歌」の批判も予想される出来ではあるが、「馬には牽(ひ)かれ」ていた〔「278歌」〕賢治のが、「分析」には「紛れていた」ことは見逃せまい。
  (岩手大学教授)




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