2006年 3月 6日 (月) 

       

■ 〈賢治の歌〉331 望月善次 われはこの夜のうつろも

 われはこの
  夜のうつろも恐れざり
  みどりのほのほ越えも行くべく。
 
  〔現代語訳〕わたしは、この夜の(空に広がる)空洞も恐れません。(この地球にかかわる)緑の炎も越えて行こうと思います。

  〔評釈〕「大正五年三月より」〔「歌稿〔B〕」〕八十四首中の三十三首目で「284歌」。「うつろ(虚ろ・洞ろ・虚ろ)」は、中が空洞のこと。空間的なことから発して精神的なものにも及ぶ語。「みどりのほのほ」は、「そらに居て/みどりのほのほかなしむと/地球の人のしるやしらずや」〔「160歌」〕から、「地球」にかかわるものだとした。しかし、決定の根拠として「160歌」を持ってきたこと自体への異論の出る可能性もあろう。そして、このことは、「夜のうつろ」と「みどりのほのほ」の関係が明りょうではないことを示す傍証でもある。「われはこの/夜のうつろも恐れざり」の強い断言は、その表向きの強さにもかかわらず、話者の不安を示しているのだとするのも評者の強調点の一つ。
(岩手大学教授)

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