2006年 4月 1日 (土) 

       

■ 死生観の多様性を探る 県立博物館で企画展「生と死と」

 盛岡市上田字松屋敷の県立博物館で第55回企画展「生と死と」が開幕した。県内各地の生死にかかわる民俗慣行や、その背景に見える日本人の死生観の多様性を探ろうという試み。写真や絵画、巻子(かんす)など約130点の資料が展示されている。

  県内各地に伝わる年中行事や出産、葬儀などの人生の節目の儀礼を収めた写真を中心に展示した「プロローグ・生の躍動と死の静寂」でスタート。

  「Tあの世へのいざない」では、死を起点として始まるさまざまな世界観を紹介。盛岡藩の絵師、田口森蔭の作「九相図」(紙本着彩、江戸後期、盛岡市永泉寺蔵)は死を迎えた女性の死がいが土灰に帰るまでの姿を、九つの相に分けて描いた図。中国の詩人蘇東坡(そとうば)の「九相詩」を基にしている。4幅同時公開は今回が初めてだ。

  「U死と背中合わせの生」では産科医療発展の歴史と、県内の出産環境の今昔を紹介。今展では平安時代の代表的な医書の国宝「医心方・巻二十二」(巻子、紙本墨書、東京国立博物館蔵)を展示。胎児が母親のおなかの中で、横になって寝た状態で描かれている。

  現在よりはるかに死に近いものだった出産。特に広大な面積を持つ本県には医療施設が乏しく、一昔前までは豊富な経験と呪術(じゅじゅつ)に基づいた「コナサセ」と呼ばれる人たちが分娩(ぶんべん)介助を行うのが一般的だった。

  会場には二戸市歴史民俗博物館所蔵の「コナサセ道具」一式を展示。陣痛促進剤として削って飲ませたというクマの手や、へその緒を切断するのに使ったアシ、天井からつり下げて妊婦をつかまらせたという麻ひもなどが展示されている。

  「V生と死のはざまで」は妖怪など超自然的な存在としての「おばけ」を取り上げた。てんぐのげたや衣などの遺物(遠野市立博物館蔵)や、白装束の女性が古木にワラ人形を打ち付けている姿を描いた掛け軸「丑満(うしみつ)参り図」(紙本着色、紫波町常光寺蔵)などが出展されている。

  学芸員の川向富貴子さんは「今は約8割の人が病院のベッドの上で死を迎えるが、生命倫理を軽視した事件の根本には、死を間近で感じられる機会がなくなったということがあるのではないか。今展が、それぞれの死と向き合うきっかけになれば」と話していた。

  5月7日まで。午前9時半から午後4時半(入館は同4時まで)。休館日は5月1日を除く毎週月曜日。入館料は大人300円、学生140円、高校生以下は無料。

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