2006年 4月 2日 (日) 

       

■ 〈賢治の歌〉358 望月善次 雲低きすそ野のはてに

 雲ひくき
  裾野のはてに
  山焼けの赤きそら截る強き鳥あり。
 
  〔現代語訳〕雲が低く垂れ込めている裾野の果てに、山焼けの赤い空を截る強い鳥がいます。

  〔評釈〕「大正五年三月より」〔「歌稿〔B〕」〕八十四首中の六十首目で「308歌」。第二句は、「歌稿〔A〕」から「裾野のはてを」と直し、再び「はてに」の形にしている。「空の切断」は、賢治の重要なモチーフで、既に取り上げている作品にも「せともののひびわれのごとくほそえだは/さびしく白きそらをわかちぬ。」〔28歌〕、「この惑星/夜半より谷のそらを截りて/薄明の鳥の声にうするる。」〔246歌〕があった。また、(後日取り上げる予定のものであるが)抽出歌のように、その切断が「鳥」によって行われるものもある。〔「あめ故に/停りありけん 青すずめ/青木をはなれ/夕空を截る」(650歌)〕。「よだかの星」の「よだか」の飛翔にも通じるイメージである。

(岩手大学教授)

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