「芸術」は「技法」がものをいう表現、技法があってこそ人を感動させる事ができる。「技法の習得」は職人のように、地道にコツコツと積み重ねられて習得されていくものである。
ただし芸術は技法が表面に表れてはいけない。「技法は芸術の裏方」に徹していなければいけない…これはわたしの終生変わることのない持論である。
しかし、悲しいかな技法は目に見えないものだ、それが「感性」というものであり、芸術の深遠を左右する「怪物」なのである。
この目に見えない技法の習得の方法論は教えることは可能だが、技法そのものを、後輩に遺産として残せないのが残念である。後輩は、また先達が踏んだ轍(わだち)を踏んで、自分自身で技法という感性を磨いていかなければならない。
技法の習得は指導をしてもらえるが、相談は不可能である。芸術に取り組む徒弟は、みな孤独なのである。
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4月1日はロシアの作曲家ラフマニノフの生まれた日。セルゲイ・ラフマニノフ(Sergey Rakhmaninov 1873.4.1〜1943.3.28)は、わたしの好きな作曲家の一人で、作曲家・ピアニスト・指揮者として活躍した。ラフマニノフはチャイコフスキーを尊敬していたそうだが、わたしはラフマニノフ作品のロマン性・知性・雄大さ、特に品性が好きである。
大作が多い。母親にピアノの手ほどきをうけたそうだが、18歳(1891年)でピアノ科を卒業し、翌年に作曲科を(プーシキンの台本によるオペラ作品で)卒業している(日本では2つの科に在籍できない)。
ラフマニノフの音楽は、ハリウッド映画にも使われた。
ショパンに関する論文を書いているので、そとヅラはショパン崇拝者のように見られているわたしだが、わたしはラフマニノフの感性を学び取ろうと今日まできた…が、いまだにつかまえられないでいる。
しかし、わたしが「ラフマニノフの真似事はできるが感性をとらえることは不可能である」ことを、最近、やっと理解できた。
なぜなら育った環境が違う。ロシアという広大な国の風土はラフマニノフを雄大に、かつ厳しく育てただろうし、貴族の出身という血筋から受けた品性の奥行きの深さは我々凡人にはうかがい知れない、底の深いものだから…。
今はラフマニノフの作品の上っツラを未練がましく眺めているだけであるが、せめてラフマニノフがどのような修練方法を通過したのかその片鱗(へんりん)だけでも知りたいものである。
(岩手大学名誉教授) |