2006年 4月 3日 (月) 

       

■  〈賢治の歌〉359 望月善次 山やけの雲を見やり

 山やけの雲を見やりつゝ鈴蘭のつゝ
  みをそつと椅子におろしぬ
 
  〔現代語訳〕山焼けの雲を見やりながら、鈴蘭の包みをそっと椅子におろしたのです。

  〔評釈〕「大正五年三月より」〔「歌稿〔A〕」〕七十四首中の五十四首目で「308・309b歌」。筆で書かれており、しかも筆で抹消されているので読み難く、全面的に『新校本全集』によった。「308・309a歌」である「山やけにはえたる雲を見やりつゝ(ながめつゝ)鈴蘭のつゝみをそつとおろしぬ」を推敲(すいこう)したもので、一首飛んで「309歌」の次に記されていて、結句には「おろしけり」の形もあった。第二句の「雲を見やりつゝ」が、一般的な八音句より詰まった感じを与えるのは、二音一拍の点からすると「雲・を×・見×・やり(見や・り×)・つゝ」となるからである。推敲の跡いちじるしいが、推敲過程を追って行くと、一首の中の「椅子」が占める重さにたどり着きハッとする。
(岩手大学教授) 

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします