2006年 4月 5日 (水) 

       

■  〈盛岡ことば入門〉289 黒澤勉 やっけくて、んめな

 Cやっけ・ゆるけ

  「このでごぁ(大根は)やっけくて、んめじょー(うまいよ)」「かでがど(固いかと)もったっきゃ(思っていたら)なーに、やっけがったじゃ」などという時の「やっけ」は柔らかいということです。「やわらかい」が「やわっこい」を経て「やっけ」と変化したものです。反対語は「かで」で、「かたい」の訛(なま)りです。

  「かたいなー」「やわらかいなー」というよりも「かでな」「かで、かで」「やっけー」「やっけ、やっけ」…などという方がはるかに実感がこもって感じられます。

  同じように「ゆるけ」というのは「ゆるい」を強調した「ゆるこい」の変化した言葉です。「このおがゆ、ゆるけーなー」「きづぐしばねで(縛らないで)、ゆるけぐして」などと言います。

  「もすこし、ゆるっとしとでんせ」「ゆるっとしたきもぢで(気持ちで)」などというときの「ゆるっと」は、この「ゆるけ」を擬態語とした言葉です。

  Dひでぇ

  「じゃ、じゃ、じゃ、ひんでーごど」「あいや、ひでぇな」「ひでぇ、あめだったなす(雨でしたね)」「ひでぇ、あっつなー(暑いなあ)」「あーひでぇ、ひでぇ」などと言うときの「ひでぇ」は共通語の「ひどい」の訛りです。「ひんでー」と撥音の「ん」が入って強調されることもあります。「ひどい」は漢語の「非道」(むごい、残酷)に「い」を付けて形容詞としたものですが、はなはだ大変という意味でも使います。

  Eあわげね

  人が亡くなったときなど「やんでらったが、あわげねがったなす」などと言いますが、「あわげねぇ」は共通語の「あっけない」です。

  「あっけない」も面白い言葉で『大言海』によると「あくけなし(飽く気なし)」が変化したものと解しています。なるほど、飽きないうちに、満足しないうちに、ということから、もの足りない、張り合いがないという意味になったものと思われます。

  Fあんつけねぇ

  「みがげによらね(見かけによらない)、あんつけねーひとだ」などと言うときの「あんつけねぇ」は「あじけない」の訛りです。「あじけない」は古語の「あじきなし」で、自分の気持ちに反して面白味がない、風情がない、というような意味から、盛岡弁では人情味のないことを言ったりもします。

  「あじけない」の「じ」を発音する時、直前に軽く撥音の「ん」が入り込み、同時に「じ」が「つ」に近く発音されて「あんつけねぇ」となります。「まづまづ」が「まんづまんづ」とか「まんつまんつ」となるのもこれと同じ現象で、「づ」の前に軽く撥音の「ん」が入り、同時に「づ」の濁音が清音になりがちです。

  (岩手医大教養部教授)  

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