「雪やこんこ、あられ(霰)やこんこ、降っては降ってはずんずん積もる…犬は喜び庭駈けまわり.猫はこたつ(炬燵)で丸くなる」(明治44年、尋常小学校唱歌)という歌があります。
さて、猫はいつ丸くなるのでしょうか。今だけ?その時だけ?いいえ違います。明治44年当時も、来年もいつも猫はそうするでしょう。これは猫の習性です。
習性は現在形で表すのでしたね。英語ではCats curl up on (by, near,
under) the kotatsu.がいいだろうとネーティブは言っていました。
ところが、「猫はこたつで丸くなった」となったらどうなりますか?。これは過去と解釈されます。となると、どんな猫でも過去のある時「丸くなった」ということは考えにくいのです。
すると、ある特定の猫、例えば隣の三毛猫が過去のある時、例えばきのう「丸くなった」のであって、その猫は今は別のことをしているかもしれません。過去形はあくまで現在とは切り離された出来事として語られているのです。その点で過去形というのは現在形よりもカバーする時間幅が狭くなります。
猫の習性を表している「猫はこたつで丸くなる」の場合の猫はどの猫でもいいので、英語ではcatsです。冠詞も何もつけない複数形であればこそ、猫一般をさすのでしたね(第23回参照)。だから無冠詞の複数形は猫の習性を表すのにピッタリなのです。
しかし、ある特定の過去時に「丸くなった猫」は特定の猫(三毛チャン)なのですからThe cat curled up.....ですね。「ザ猫」です。
このように動詞が担う時間表現と数を担う名詞の単数〓複数、aやtheなど、一見関係なさそうなものが「化合」していることが分かります。
ネーティブに英文をみてもらうと思いがけない指摘をされます。でも、彼らの外界認識の仕方とそれを言葉にするときの物事の「切りとり方」の違いが面白くなると、英会話の機会がなくても視野が広がって英語を楽しめます。また、大学受験勉強では多くの分野の英文に接してこの感覚を体験することが、設問に答える練習の根底になります。
(言語人文学会会長)
|