雲かげの行手の丘に
風ふきて
さわぐ木立のいとゞあわたゞし。
〔現代語訳〕雲の影の行く先の丘に、風が吹いて、音を立てている木立が非常にあわただしいのです。
〔評釈〕「大正五年三月より」〔「歌稿〔B〕」〕八十四首中の六十五首目で「314歌」。結句は、当初「あは(ママ)たゞし」であったものから、仮名遣いの誤りに気づいたのか、抽出歌の形に修正している。「雲の詩人」という呼称を挙げるまでもなく、賢治にとって「雲」は重要な存在で、「雲見」の語もあるほどである。抽出歌においても、その「雲」を見つめている話者の場所や位置が気になるところであるが、例えば『宮沢賢治の短歌を読む』(p.73)は、「むこうは吹いている。(これからいくところ)」として、「道を急がせられる気持ちも」も添えて、結句の「あわただし」について、「よくきいている。」としているが、賛否共々、その評価については、意見の分かれるところであろう。
(岩手大学教授)
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