2006年 5月 3日 (水) 

       

■  〈賢治の歌〉388 望月善次 鉄砲を担ぎて彼ら

  鉄砲をかつぎて
  渠ら繞り行く
  停車場みちの
  赤ねむの花
 
  〔現代語訳〕鉄砲をかついで、彼等は、巡回しています。この停車場の道には、赤い合歓(ねむ)の花が咲いています。

  〔評釈〕「大正五年七月」〔「歌稿〔B〕」〕三十六首中の三首目で「332・333b歌」。「331歌」の左下に、「332・333a歌」に続いて書かれている。第二句の「渠ら」は「渠等」と書き始めて漢字を開いている。「水」と「穴」から成り「溝」を表す漢字「渠(キョ)」を「彼」の意味に用いるのは借用。「渠ら」の具体は、「332・333a歌」で記した二皇子歓迎の状況に沿えば、その到着に備えて、警備のために駅の周囲を巡回している者たちを想定すれば良いであろう。しかし、話者の目が見ているところは、皇子の上にはない。一首の中心は、(警備の)人々と赤い合歓の花の対比であり、こうした対比や視線の転換は、賢治短歌がよく用いた手法であることも記さねばなるまい。

(岩手大学教授)

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