2006年 5月 5日 (金) 

       

■  〈賢治の歌〉390 望月善次 七草のもりのしづまを

 (湯船沢)

  七月の森のしづまを
  月いろの
  わくらばみちにみだれふりしく。
 
  〔現代語訳〕七月の森の静けさの中に、月色にむしばまれた葉が道に、盛んに乱れ降っています。

  〔評釈〕「大正五年七月」〔「歌稿〔B〕」〕三十六首中の五首目で「334歌」。第二句の「しづま」(「しじま」か?)は、当初「つ」と書き出して、書き直している。また「歌稿〔A〕」では、「月いろ」は「月色」と漢字表記であった。伝記的には、七月八日の関教授引率による盛岡付近の地質調査(賢治は、B班担当)に対応する作品で、「歌稿〔A〕」のau20」の末尾には「以上地質調査中」の注記もある。抽出歌と次の「335歌」は、「湯船沢」という題名の元に書きつけられているわけだが、題名は、解釈に対する作者からの「案内」であると同時に、「強制」でもある。それに従うと、当然解釈は狭まってくるわけであるが、解釈を狭めることが作品を魅力的にするかは別問題である。

  (岩手大学教授)

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