2006年 5月9日 (火) 

       

■  〈英語ってどうなってんの?〉115 成田浩 事の後先 

 「駅に着いた時には、電車は出発してしまっていた」と言う場合、英語はどう考えるのか。時間の流れや、完了したかしないかなど、出来事の後先を出来るだけ明確にしようとするくせのある言語ですから何かありそうです。

  この例では、駅に着いたという過去の出来事よりも以前に電車が出発したという出来事が起こっていたのです。その英語は高校時代に習ったWhen I got to the station, the train had

already started.です。電車(汽車)が出発したほうは単なる過去startedではなく、過去よりさらに一段過去をあらわすhad startedという形になっています。これを、大過去と呼ぶこともあります。学校では過去完了などと習います。

  そんなこと言ったら、「駅に着いた時電車はすでに出発していた」という出来事のさらにその前に「自分が乗った駅行きのバスが渋滞にまきこまれてしまった」という出来事が起こっていたらどうするんでしょう。

  過去完了よりさらに以前の過去だから「過去過去完了」か。そんなの聞いたことがない。過去のできごとを一つずつさかのぼるごとに過去の言い方を変えていくのか。そんなことしたら、過去の言い方がいくらあっても足りません。

  まず、事の起こった順序を観察してみましょう。まず電車が出発しましたね、これが先に起こった出来事です。その後で駅に着いたのです。

  このように、起こった出来事の順序に話しをすすめていくときにはThe

train already started and I got to the station. のように、どちらの出来事も過去形でいいのです。ところが、時間的に後に起こった事「駅に着いたとき」から言い始めてしまったものだから、それより時間的にさらに過去に起こっていた「電車がすでに出発した」は「駅に着いた」という過去よりもさらに以前に起こっていた事なんだよと、時間差を明示しているのです。

  だから、時間的流れに逆らった言い方になってしまったとき、そのつど1回だけ過去より一つ前の過去完了に戻すのです。しかし、二つの過去の出来事の後先に言及する必要もない場合はいちいちこうしないこともあります。(言語人文学会顧問)

 
 

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