2006年 5月11日 (木) 

       

■  〈賢治の歌〉395 望月善次 まどろみにふっと入りくる 

 (新網張)
  まどろみに
  ふつと入りくる丘のいろ
  海のさましてさびしきもあり。
 
  〔現代語訳〕まどろみの中にふっと入って来る丘の色は、海の様子をしていて、寂しいこともあるのです。

  〔評釈〕「大正五年七月」〔「歌稿〔B〕」〕三十六首中の十首目で「339歌」。第四句は、「歌稿〔A〕」では、「海のごとくに」であり、抽出歌も当初はそれを引き継ぎ、後に右に示した形としている。「歌稿〔A〕」の形である「海のごとくにさびしきもあり」では、具体的な「丘の色」は示されていなくて、その色が、とにかく「海のように」さびしさを与えるわけであるのに対し、抽出歌における「海のさまして」となると、「丘のいろ」の具体は、「海の様子をしている」ことは明示されていて、それを話者が「さびしきもあり」と判断しているわけである。また、「さびしきもあり」の「も(助詞)」は、「列挙」の「も」であるというより、「ある事態がそれに及ぶことを示す」ものであろう。
  (岩手大学教授)



 

 

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