2006年 6月4日 (日) 

       

■  〈賢治の歌〉419 望月善次 薄光る月長石の

 うすびかる月長石のおもひでより
  かたくなに眠る兵隊の靴
 
  〔現代語訳〕薄く光る月長石の思い出を契機として、頑なに眠っている(ように思われる)兵隊の靴よ。
  〔評釈〕大正五年八月十七日付の保坂嘉内宛書簡中二十首の十一首目。「月長石」は、「ムーンストーン」とも呼ばれる「長石」の一種で、「美しい青色の変彩を示すもの。」〔『マイペディア』〕。「月長石のおもひでより」の「より」の意味は必ずしも明らかではない。が、「宮沢賢治・全短歌テキスト検索」(宇宙文化研究所)によると(「歌稿〔A〕」の範囲ではあるが)賢治の「より」は、動作の起点を示す「格助詞」の「より」であり、「ヨーロッパ語の形容詞比較級の翻訳」〔『広辞苑(第五版)』〕より生じた「副詞」の「より」ではないから、「思い出を契機として」の訳を付けた。「(かたくなに)眠る/(兵隊の)靴」は、「結合比喩(ゆ)」で「かたくな」と「兵隊」もまた釣り合っている。
(岩手大学教授)

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