2006年 6月5日 (月) 

       

■  〈賢治の歌〉420 望月善次 大使館、低き煉瓦の

 大使館 低き煉瓦の塀に降る 並木
  桜の 朝のわくらば。
 
  〔現代語訳〕大使館よ。その低き煉瓦の塀に降っている桜の並木の朝の色づいた葉よ。

  〔評釈〕大正五年八月十七日付の保坂嘉内宛書簡中二十首の十二首目。『校友会会報』第三十二號Aの「健吉」名による「灰色の岩」二十九首の十九首目には「大使館、低き煉瓦の、塀に降る、並木櫻の朝の病葉。」とあり、当時の賢治の短歌定型観の一端を示している。(ちなみに、他の学生たちの短歌は五七五/七七の所謂(いわゆる)「上句・下句」の表記となっている。)「大使館」は「フランス大使館」。「病葉」には「わくらば」のルビがついている。「わくらば」には「病葉・嫩葉」の両用漢字があるが、ここでは漢字表記の点からも、「八月の桜」という季節的な面からも「前者」である。話者の客観的姿勢が目立つ一首だが、「大使館/煉瓦」の西洋的なものへ関心のと「低き/朝」がポイントだろう。
  (岩手大学教授)




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