2006年 6月6日 (火) 

       

■  〈賢治の歌〉421 望月善次 薄れ日の三井銀行

 うすれ日の三井銀行その中の弱きひ
  とみのふっとなつかし
 
  〔現代語訳〕薄れ日を浴びている三井銀行よ。その中の弱げな瞳がふっとなつかしく思われるのです。

  〔評釈〕大正五年八月十七日付の保坂嘉内宛書簡中二十首の十三首目で、句点はない。「三井銀行」は、一八七六年設立の日本最初の私立銀行。一首の解釈で苦戦したところは、「弱きひとみ」の具体であった。可能性としては、銀行員、銀行員以外の利用者、話者自身などが考えられよう。銀行員であれば、窓口の女性などであろうか。いずれにしても、客の無理な物言いに対して困惑している銀行員などを想像すれば良いであろうか。利用者であれば、銀行という、明治時代に誕生した西洋的文化に違和感や戸惑いやその雰囲気に気圧されている人などを想像すれば良いであろうし、あるいは、それは、話者自身のことであったのかもしれない。いずれにしても、話者はその「弱き瞳」に共感したのである。
  (岩手大学教授)






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