今森光彦さんといえば世界的に知られた写真家ですが、その活動の拠点は、生まれ故郷でもある琵琶湖畔。ここにそそぎ込む清流・安曇川(あどがわ)の伏流が湧水(ゆうすい)となって潤っている一画があり、そこでは今も、清らかな水を中心とした暮らしが営まれています。
この小さな集落に通いつめた今森さんは、ある老漁師の暮らしに寄り添い、水をめぐる人、植物、動物たちの一年をファインダーを通して記録し、一冊の写真絵本としてまとめました。この取材はテレビ映像としても記録され、国際的にも高い評価を受けています。
テレビ版では動物たちの生態に比重がかかっていましたが、本作では漁師・三五郎翁(おう)の日々が中心となって紡がれています。気づかされるのは、万物の霊長たるヒトとて、命の源・水をめぐる循環の中にあっては、あくまでも構成員のひとつにすぎないということ。地上に生きる者として、分をわきまえ、謙虚に「生かされる」ことこそが今、もっと見直されていいのではないか。…ページを繰る手が、何度となくとまります。なくしてしまった日本人本来の生き方がここにあり、だからこそ、未知の光景が懐かしく映るのです。
【今週の絵本】『おじいちゃんは 水のにおいがした』今森光彦/著、偕成社/刊、1890円(税込み)6歳〜(2006年)
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