2006年 6月9日 (金) 

       

■  〈賢治の歌〉424 望月善次 密林のひまより碧き空 

 密林のひまより碧きそらや見し明き
  こゝろのトルコ玉かな。
 
  〔現代語訳〕密林の(樹木の)間から紺碧(こんぺき)の空を見たのでしょうか。(この晴れた空は)明るい心(に通じる、そ)のトルコ玉です。

  〔評釈〕大正五年八月十七日付の保坂嘉内宛書簡中の二十首の十六首目。この後の四首は既に取り上げた「版画のうた」となる。「密林」はジャングルのこと。樹木や草等が密生しているから、中に入ってしまった人には、広い空が見えなくなるわけである。「トルコ玉」は、「トルコ石」のこと。賢治は「turquoisタークォイス、タキス、土耳古玉」などのさまざまな表記をしており〔以下共、『新宮澤賢治語彙辞典』〕、多様さは重要さの反映。「トルコの詩人はトルコ石の色を雲のない夏空にたとえたが、賢治も晴れ上がった明るい青空の比喩(ゆ)に使う。」という原子朗の指摘は、まさにこの一首へのもの。一連の中では、「密林のひま」は唐突でもあるので、次の「版画のうた」への「繋(つな)ぎ歌」だとしても良い。
(岩手大学教授)


 




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