日本語では「〜ながら」の用法は5つほどあります。その中の一つが副助詞(接続語、接続助詞とする説もある)で、動詞の連用形を受け、二つの動作が並び行われることを表す、と『日本国語大辞典、第2版、小学館』にあります。
二つの動作が同時に行われることを表すという点では、英語も全く同じです。例えば、John comes.「ジョンが来る」John sings a song「ジョンが歌を歌う」が同時進行するとしたら、後のJohnは同じ人だから言う必要もないので省略し、John comes
singing a song.のように、後半の
sings以下をsinging a songという形にして、John comesに続けます。
この-ingはこれまで数回みてきたあの「〜ている」です。進行形のときの、あの-ingです。日本語ではこういうとき時には「〜ながら」という言葉になりますから、「ジョンは歌を歌いながらやって来る」と言っているだけなのです。
このことを文法書や受験参考書では「現在分詞の叙述的用法」と書いてありますが、それで英語の中身が分かるでしょうか。もしかすると、文法用語だけが記憶に残って英語のほうは口から出てこない可能性大です。
現在、中年世代以上の人なら文法用語漬けで英語を勉強した経験をもっていることでしょう。文法用語経由での英語では、ゆっくり英作文するときならまだしも、会話では間に合いません。
わたしたちの、いわゆる「脳内辞書」には日本語の単語が五十音順に入っているわけではないし、助詞だの形容動詞だのという文法用語から検索して日本語会話をしているわけでもないのです。対話場面が与えられると、自然に日本語がでてくるのです。
わたしたちの日本語運用力は一種の「手続き記憶(作業記憶)」(第58回参照)になってしまっているのですから。英語をそのレベルに近づけることができなくても、その途中に面白いことがいっぱいあります。
(言語人文学会顧問) |