2006年 7月1日 (土) 

       

■  〈賢治の歌〉446 望月善次 盆地にも、きょうは別れの    

 盆地にも、今日は別れの、本野上、
  駅にひかれる、たうきびの穂よ。
 
  〔現代語訳〕(この秩父の)盆地にも、今日は別れる本野上の地よ。その駅に光っているトウキビの穂よ。

  〔評釈〕『校友会会報』第三十二号Aの全二十九首中の二十八首目。「萩原パンフ」によって、伝記的事実を記すと「9月7日朝、秩父大宮を出発した一行は、再び上長瀞、岩畳を経て本野上に至る。ここは列車の中継点でもあったらしい。同時にここは、現在でも日本最大といわさるポットホールが存在する。賢治一行がこれを見逃す筈(はず)がない。」となる。なお、ポットホールpotholeは、「甌(おう)穴」のことで「上部に開口する洞窟(どうくつ)」のことである。賢治たちは、この後、同日上野発午後11時(急行青森行)に乗車し、翌8日の午後12時59分に盛岡駅着となったのではないかというのも「萩原パンフ」の推察。「今日は別れの、本野上」と所有格で「本野上」に続けているのは賢治短歌力量の一端。
  (岩手大学教授)


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