2006年 7月2日 (日) 

       

■  〈賢治の歌〉447 望月善次 はるばると宗谷に行かん

 はるゞと、宗谷に行かん、少年の、
  工夫はねむる、朝の阿武隈。
 
  〔現代語訳〕遙々(はるばる)と(北海道の最北端の)宗谷に行こうとしている少年工夫は眠っています。朝の阿武隈を通過しながら。

  〔評釈〕『校友会会報』第三十二号Aの全二十九首中の最終歌。「宗谷」は、北海道最北部の支庁名で、宗谷、枝幸、礼文、利尻、天塩からなる〔『マイペディア』〕。「阿武隈」は、茨城北部、福島東部、宮城南部に至る「阿武隈高地」のことか。賢治達の秩父行きに合わせるとすると、一応は、その帰途のこととできよう。「はるゞと、宗谷に行かん、少年の、工夫はねむる」からは、話者が車中で乗り合わせたその「少年」と話しをし、「少年」が眠る前に、少なくとも、「宗谷」に行くこと、「工夫」であることを聞いたことを意味している。丁度、「阿武隈」を通過するころは、その「少年」が眠っていたのである。話者の「少年」への共感的視線が印象的だが、状況説明は、例のごとく独断的でもある。
(岩手大学教授)


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