2006年 7月3日 (月) 

       

■  〈賢治の歌〉448 望月善次 うち並び浮かぶ紫苑に 

   岩手公園 「教授怒りながら馬車
    を進む」の書き入れあり。
  うちならび
  うかぶ紫苑にあをあをと
  ふりそゝぎたるアーク燈液
 
  〔現代語訳〕(その光の中に)浮かび出た紫苑の上に青々と降り注いでいる、ず〜と並んでいるアーク燈の波のような光よ。

  〔評釈〕「歌稿〔B〕」の「大正五年七月」三十六首中の二十四首目で、「岩手公園」と題された「354歌」で、「教授怒りながら馬車を進む」の書き入れがあり、その解釈次第で歌意は一変する。九月十一日から第二学期が始まり、その位置に置かれている一首。「アーク燈」は、「アーク放電」(低電圧、大電流により強い光と熱を発生する気体内放電の最も進展した形態。単にアークまたは電弧とも。)の際の発光を光源とする照明灯〔『マイペディア』〕。「アークarc、弓、 円弧」の名は、放電の弧型により、「燈液」は、放電を「波」に見立てての表現〔『新宮澤賢治語彙辞典』〕。文語詩「岩手公園」の中にも、「弧光(アークライト)にめくるめき」の一節があり、賢治らしいイメージの一首。
(岩手大学教授)


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