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農場
むらだちて
あひるはすだき
風去りて
トマトさびしく
みちにおちたり
〔現代語訳〕群れをなしてアヒルは集まり、風も去って、トマトが寂しく道に落ちています。
〔評釈〕「歌稿〔B〕」の「大正五年七月」三十六首中の二十五首目で、「農場」と題された「355歌」。「歌稿〔A〕」には、「農場二首」のもとに、「風ふけばまるめろの枝ゆれひかりトマトさびしくみちに落ちたり」となっていて、「歌稿〔B〕」においても、「歌稿〔A〕」からの推敲(すいこう)から始まっている。推敲も、「トマトさびしくみちに落ちたり」は動かさずに、この表現に見合うものを探し求めていることは明らか。「マルメロ」から、「アヒル・風」への推敲からは、(そのいずれの現象も事実を背景としていたとしても)賢治の推敲が必ずしも、「事実遵守(じゅんしゅ)」型ではなかったことをも示唆していよう。評者としては、抽出歌では、「アヒル・風・トマト」への視線の注ぎ方に改めて注目した。
(岩手大学教授)
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