2006年 7月6日 (木) 

       

■  〈賢治の歌〉451 望月善次 霜曇りコオロギ鳴ける  

 霜ぐもり
  こほろぎなける刈あとに
  黒き堆肥を
  はこびくる馬
 
  〔現代語訳〕霜が降りそうな寒い空のもと、コホロギが鳴く刈跡に、黒い堆肥(たいひ)を運んで来る馬よ。

  〔評釈〕「歌稿〔B〕」の「大正五年七月」三十六首中の二十七首目で「356・357a歌」。「356・357b歌」には、「霜ぐもり/黒き堆肥は/こほろぎの/啼く刈跡に/はこばれにけり」もある。この連載では、所謂(いわゆる)「a.b歌」の場合は、両方を取り上げることを原則とはしているが、この場合は、類似性が強いので、「a歌」のみへの言及に止めたいと思う。「霜曇り」は、「霜がおりるときに空が曇ること。当時の人人はそう思っていたのであろう。」というのが、『岩波古語辞典』の説明。抽出歌においては、気温が九月にしては寒いこと、曇り空の様子が「霜」を思わせるものであったのだろうかとも想像してみた。「農場」における作業それ自体ではないところへの注視もまた賢治的。
  (岩手大学教授)



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