わたぐもの
幾重たゝめるはてにして
ほつとはれたるひときれのそら。
〔現代語訳〕綿雲が幾重にも折り重なっている果てに、ホッとするように晴れているひと切れの空よ。
〔評釈〕「歌稿〔B〕」の「大正五年七月」三十六首中の二十九首目で「357歌」で「仙臺」と題された一首。賢治たちは、同年十月四日〜七日に、山形市で開催中の「奥羽連合共進会」に、仙台・福島経由で参加したから、伝記的にはそれに対応する作品群。「綿雲」は「綿のような感じで浮かぶ雲。多くは積雲をいう。」〔『広辞苑』〕。なお、「積雲」は、「十種雲形」の一つで、「垂直に発達し、高度2000メートル付近に発生する。」〔『マイペディア』〕というが、この説明と抽出歌との整合性は、自然現象に疎い評者の及ばぬところ。「雲」は、賢治にとって重要な存在であったことのみを記しておこう。思わず話者の感慨が吐露されている「ほつ」を含む「ほつとはれたる」の口語的表現も効果的。
(岩手大学教授)
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