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昭和51年3月、濤書房から厚手の上質紙を使った豪華な『Adam&Eve』(A4判・154ページ)が創刊されました。“特集にこだわる”というように、ひとつのことに徹底した編集の雑誌です。
創刊特集は、人々の生活と暦は一体であると「絵ごよみ」を企画しました。
冒頭に、その趣旨を「いまこの瞬間の世界中に様々の事件が起きていて、それが暦の一日だ。しかしその某月某日は一日でなく記録されただけで数百回以上。もし、むかし風の日めくりに置きかえると、一枚めくればそこに歓びと悲しみ、笑いと怒り、出会いと別れ、その外のさまざまな出来事があふれだす。思いつくまま写真に託して、人類の一年を作ってみました」と、述べます。そして世界中の歴史的出来事や伝統的風物を、絵や写真、文章で構成して365日分の「絵ごよみ」に仕立てました。
例えば、グラビアの4月5日には、釧路港の雪景色が載ります。その下に「1908(明治41)石川啄木釧路を去る《しらしらと氷かがやき千鳥なく釧路の海の冬の月かな》」と解説があります。
そして本文には「石川啄木は放浪の詩人である。故郷・岩手県渋民村の小学校代用教員の職を追われ…(略)一九〇七年八月の函館の大火ののち、小樽、釧路と各地を転々とするが…(略)ついに一九〇八年(明治41年)のこの日、傷心の思いで釧路を去り東京へ向かったのである」と書き、「さいはての駅に下り立ち…」の歌が添えられるのです。さらに6月15日の写真には、畔(あぜ)道を行列する「チャグチャグ馬コ」も組まれるのです。
吉田光邦「暦は時間に対する人間の捧げ物だった」、岡田芳朗「暦の歴史としくみ」、草森紳一「漂流十五少年のカレンダー」など、世界の暦に関する研究論文も掲載されます。
吉田は「旧暦は間違いが多いので太陽暦に変えられたという者もいるが、決してそんなことはない。また、西暦は世界共通の年代の数え方だから、元号は廃止せよという日本人もいるがそれもナンセンスだ。世界にはイスラム紀元や釈迦紀元もある」と、時代を越えて人々の暮らしと暦は密接な関係にあると主張します。
特集に集めた資料の数は膨大です。あまたの雑誌にも保存すべき貴重なものはありますが『Adam&Eve』創刊号もその1冊です。
(毎週日曜日掲載)
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