2006年 7月16日 (日) 

       

■  〈盛岡百景〉73 盛岡さんさ踊り

     
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 7月に入ると、盛岡市内の夜は、あちこちに和太鼓の音色が響き渡る。盛夏の8月初めに行われる盛岡さんさ踊りに出演する団体の練習する音だ。盛岡を代表する夏祭りは、約3時間半にわたって市内の目抜き通りを大群舞があでやかな色で埋めるが、太鼓や笛、鉦(かね)に掛け声、そして掛け声の織りなす音の風景でもある。目に見えなくとも地響きのように伝わる練習の太鼓は音の風景を実感させる。

  さんさ踊りは盛岡地方で古くから伝わる盆踊りを指して呼ぶようになった。南部手踊りと呼ばれる特徴的な手振りを持ち、盛岡城築城のころには形作られたという。さんさの語源は諸説あるが、さんさ踊りの起源としては三ツ石神社に伝承される鬼の手形の三ツ石伝説に勝る言い伝えはないだろう。岩手の語源となった伝説。盛岡さんさ踊りの前、関係者は伝説にならって神社に踊りを奉納する。

  郷土色の強いさんさ踊り。盛岡近辺には数々の伝統さんさ踊りが残る。多くは無形民俗文化財となり、それぞれに特徴を持つ踊りは各地の保存会で受け継がれている。そんな土壌の中、より多くの市民が参加して楽しめる盛岡さんさ踊りが、約30年前に生まれた。

  盛岡さんさ踊り誕生のきっかけは71年に始まった盛岡川まつり。踊りは74年にメニューに加えられ、77年には柱に据えられた。この折、盛岡さんさ踊り振興協議会に依頼した統合さんさ(第1)が誕生する。

  78年、盛岡川まつりを発展的に解消して第1回盛岡夏まつり・さんさ踊りが8月2〜3日に行われた。盛岡さんさ踊りと改称されたのは83年だった。開催日数は変動するが、おおむね3日間、市中心部は盛岡さんさ踊り一色となる。近年は1日に5千個が繰り出す太鼓を一番の楽しみとする観客も増えた。

  薄暮の中央通り。色とりどりの浴衣に花笠を付けた踊り手、太鼓を担いだ太鼓衆。市役所前を次々とスタートする。気の早い客は日中から沿道に陣取っている。その観客の前をパレードしていく。

  参加者がにじませていた汗はすぐに玉のような汗と変わり、したたり落ちていく。短い夏を謳歌(おうか)するようエネルギーを1点に集中させる。北国に共通する夏祭りの姿がそこにある。終了の時間には、よいやみの名残も消え、終わってからもしばらくは太鼓とおはやしが耳の奧でリフレインしている。(井上忠晴記者)


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