2006年 8月4日 (金) 

       

■  風の又三郎を描く 田原田鶴子さんが油彩作品展 

     
  「風の又三郎」より「いつのまにか又三郎がいつもの鼠色の上着にガラスのマントを着て光るガラスの靴をはいて立っていました 風がどんどん吹いています」  
 
「風の又三郎」より「いつのまにか又三郎がいつもの鼠色の上着にガラスのマントを着て光るガラスの靴をはいて立っていました 風がどんどん吹いています」
 
「賢治作品の自然表現の素晴らしさ。それを絵で表現することに喜びを感じる」。盛岡市出身の画家・田原田鶴子さん(50)=神奈川県川崎市=は、14年前から宮沢賢治の作品に取り組んでいる。賢治童話の大作としては2作目の挑戦となる「風の又三郎」を中心とした個展が、盛岡市中ノ橋通1丁目の岩手銀行中ノ橋支店赤レンガギャラリーで11日まで開かれている。

 展示作品は、「風の又三郎」の絵本を想定して描いた油彩26点。
  物語の冒頭の「九月一日」。夏休み明けの教室に見覚えのない赤い髪の男の子が座っている。その不思議な様子に子供たちが「あいづは風の又三郎にちがいない」とささやき合う場面。短い夏の終わりをともに過ごし、迎えた「九月十二日」。子供たちに不思議な印象を残して去っていく少年…。

  そんな生き生きとした場面の一つ一つが、山村の子供たちの暮らしとともに描かれた。

  「自分が子供のころに見た圧倒されるような空の大きさ、きらきらと輝くような緑。夏休み明けに久しぶりに会った同級生の顔が大人びていたり、転校生との別れに胸が締めつけられたり…子供ならではの感覚ってあると思うんです」と田原さん。「今でも東京から岩手に帰ってくると、ああ空が広いなあと感激するんです」


     
  「賢治の自然表現に引かれる」と話す田原田鶴子さん  
 
「賢治の自然表現に引かれる」と話す田原田鶴子さん
 
  岩手大学教育学部甲一類美術科卒。小さいころから劇などで賢治作品に親しんでいたが、大学在学中に「集中講義で賢治の『永訣の朝』を知り、心が揺さぶられるような感覚を覚えた」。そのまま大学生協に行き、文庫版の「銀河鉄道の夜」を買い求めたという。

  雑誌の表紙絵から賢治作品に取り組み、2000年には挿画を手がけた「銀河鉄道の夜」(偕成社刊)が出版された。「賢治は例えばさそり(座)の表現でも〓ルビーよりも赤くすきとほりリチウムよりもうつくしく酔ったやうになってその火は燃えてゐる〓と表現している。賢治の目にはそのように見えていたかと思うと、独特の感性を感じる」と話す。

  特に自然に関する描写では文そのものが絵画的でもあるが、油彩で表現することに気負いはもたないようにしているという。

  「賢治という最高峰に向かって、誰もがそれぞれの分野でアプローチしている。決してたどり着くことはできなくても、わたしはわたしのやり方で〓描きたい〓と心から思ったものに真剣に取り組んでいきたい」と話していた。

  赤レンガギャラリーは午前9時から午後3時まで。土日祝日休み。

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします