日本語ウオッチングをしましょう。つぎの例文を見てください。
1.彼はこの家に住んでいる.
2.これは彼が住んでいる家です.
どちらも自然な日本語です。でも、1では「家に住んでいる」のように、ちゃんと「〜に」があります。ところが、2のほうは「彼が住んでいる家」となっていて「〜に」は見当たりません。このことは、英語を含むヨーロッパ諸言語を話す人にとってはとても不思議で変なことなのです。これは、わたしがベルリン、ケベック、パリの国際言語学者会議の学会発表などを通じて体験したことの一つです。
これは、どういうことかというと、中学校の3年生くらいの期末テストなどで、次のような問題が出ることでも分かります。
その問題とは:「これは彼が住んでいる家です」と言う意味になるように次の英文の( )に適当な一語を入れなさい、というものです。
その英文はThis is the house he lives ( ).です。日本語だと「これは彼が住んでいる家です」だからこれで十分なはずです。( )に入る語はないように思えます。でも、答えは( in )です。This is the house he lives in.が正解ということになります。これを忠実に日本語にすると「これは彼が に住んでいる家です」とでも言っていることになります。なんでそうなるのか?それは、「住む」と「家」との関係は「の中に」という場所なのだから、それをどんな場合も外すわけにはいかないということなのです。
日本語だって1の場合なら「彼はこの家に住んでいる」のように「〜に」(inに当たるもの)がちゃんと入っていますが、2のように言うときは「彼が住んでいる家」のように、「〜に」は消えています.日本人は決して、「これは彼が に住んでいる家です」などと言うことは思いもよらないことなので、中学生のみならず気がつかないことが多いのです。 (言語人文学会顧問)
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