2006年 8月6日 (日) 

       

■  瞽女の記憶 本宮正保さんが詩集「阿良沢村」

     
  第5詩集「阿良沢村」を出版した本宮正保さん  
  第5詩集「阿良沢村」を出版した本宮正保さん  
  八幡平市(旧安代町)出身の詩人本宮正保さん(76)=盛岡市前九年3丁目=が、第5詩集「阿良沢(あらさわ)村」を出版した。津軽から旅してくる瞽女(ごぜ、旅の女芸人)を心待ちにする人々、街道を流れてきた物ごいの母娘に風呂と朝食を与える老女…少年時代の本宮さんが見た村の情景がよみがえっている。「貧しく苦しいことも多かったが、他人を思いやる心の豊かさはあった。どうしても書き残しておきたかった」と話す。

 「阿良沢」という表記の村はないが、本宮さんは合併で安代町が誕生する前の旧荒沢(あらさわ)村出身。「この村での出来事は県北はじめほかの地域にも通じる」と、あえて架空の村に設定した。
  本詩集は、2003年に出版した第4詩集「わたしの中の花輪線」(土曜の会発行)に次ぐもので、この3年ほどに書きためた27編をまとめた。

  そのうち「阿良沢村」は、鹿角(秋田県)などへ通じる街道の宿場町だった当時の様子を伝える。毎年、秋と雪解けのころの2回、比較的若い娘を先導にやってくる目の不自由な女芸人(瞽女)たち。三味線に載せた瞽女語り…。

  「字が書けない本も読めないはずのおばあさんたちが、よくわたしたち子供にいろいろな話をしてくれた。今思えば瞽女から聞いた話だったのかもしれない」と思い起こす。

  収録された詩の中では、東風(やませ)による冷害で苦しめられる農民、貧しさから他家へと預けられる少女たち、その親たちの悲しみもつづった。

  「確かに物がなく、苦しい時代だった。それなのに物に恵まれている現代社会に満たされないものを感じるのは何なのか」と本宮さん。

  子供のころ、仲間だけで川に入って遊んだことも楽しい思い出だ。危険な場所には近づかないのがルールだった。「今は、大人が管理・監視しているはずのプールであのような痛ましい事故が起こり、子供が犠牲になってとても悲しい。何かがおかしい」と憂う。

  心の郷里の風景を言葉にし続けてきた。同郷の詩人、故・香川弘夫さん(晩翠賞受賞者)の存在も大きい。「自らの土着を認め、病気など弱い部分も書き表すことでそれを乗り越えようとした人」と敬意を示す。

  本宮さん自身も「今度こそ現代詩に挑戦を−と思うがなかなかね」と、生まれ育った古里の風景に詩作の原点を感じている。

  詩集「阿良沢村」は、123ページ、やまびこタイプ出版部発行。頒価2千円。

  問い合わせは、本宮さん(電話647−5234)まで。

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