入合の西のうつろを見てあれば
しばしば
かっとあかるむひたひ。
〔現代語訳〕日の沈む頃(ころ)の西の虚空を見ていると、よくかっと赤くなる額なのです。
〔評釈〕「歌稿〔B〕」の「大正五年十月より」六十三首中の二十四首目の「390歌」。「歌稿〔A〕」では、初句から「きん色の西のうつろをながむればしばゝかつと」の形であり、「歌稿〔B〕」も、ほぼ同じ形から始めている。「かっと」の「っ」は、「歌稿〔A〕」では「つ」で、賢治の促音表示の揺れを示している。「入合(入相)」は、「日の入る頃」。「かっ」は、オノマトペで「急激かつ瞬間的な状態の変化を示し、変化は増幅の傾向に限られる。」〔『暮らしのことば擬音・擬態語辞典』〕。「しばしば/かっとあかるむひたひ」は、一応は、話者の夕焼けなどに照らし出される額の描写を示しているが、(賢治好みの夕暮れ空に対応させて)「かっと」に感慨を入れるか解釈は揺れよう。
(岩手大学教授)
|