2006年 9月1日 (金) 

       

■  〈賢治の歌〉506 望月善次 オリオンは西に移りて   

 オリオンは
  西に移りてさかだちし
  ほのぼののぼるまだきのいのり。
 
  〔現代語訳〕オリオン座は、西に移って逆立ちをして、ほのぼのと昇っています。そのオリオンに向かって、早朝の祈りを捧(ささ)げるのです。

  〔評釈〕「歌稿〔B〕」の「大正五年十月より」六十三首中の四十六首目で「409歌」。「オリオン」は、言うまでもなく星座「オリオン」のこと。ギリシア神話の狩りの名人オリオンによる。アルテミス女神の放ったサソリに刺殺された故事もあまりに有名。「まだき(夙・未だき)」は、もともとは「その時期も来ないうちに。早くも」などを示す副詞。転じて名詞となり「早期」となり、抽出歌では「早朝」の意。「現代語訳」では「まだきのいのり」の「いのり」の主体を、一応、話者だとし、「ほのぼの」と感じているのは話者だとしたのだが、その主体を「いのり」自身だとして、「いのり」自身が「ほのぼの」と「のぼる」のだとする解釈も可能で、その魅力も捨て難いのが評者の立場。
  (岩手大学教授)


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