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「屋根の上にハトがいる」と「屋根の上をハトが飛んでいる」は、どちらも「〜の上に」ですが、英語では、前者がThe pigeons are perching on the roof. で、後者が、The pigeons are flying over the roof. です。同じ「〜の上に」でも、屋根面に接触しているならon で屋根面から離れているならover で、日本語なら「〜を越えて上を」というところです(第66回センターオーバーのヒット参照)。
川を渡る場合でも、歩いて渡るのであれば、cross the riverなのに、その川に橋がかかっていれば、cross over the riverとなります。「川を越えて渡る」というとらえ方をしていることが言葉に表れています。実際に、目の前に橋があるという状況では、いちいちoverをつけなければ間違いということではありませんが、興味をひくのは、外界をどのようにとらえ、それを言語化しているかという点です。
ある言語では、ある面がいやに詳しく、たくさんの語彙(ごい)や文法操作があるのに、別の面ではきわめて大ざっぱということはよくあることです(第65回のエスキモーの言語の例もその一つです)。
日本語では、1匹のハエがテーブルのような平面にとまっていても、垂直な壁面にとまっていても、天井にとまっていても「〜の上に」でかまいません。平面でも、縦面でも、下から見た面でも使えます。その点では大ざっぱかもしれません。英語のonは、それらの面と接触しているかどうかという意味要素が含まれています。
接触の意味が次のような言い方にまで現れます。「つま先で歩く」がwalk on tiptoesですから、つま先の上で歩く。「彼はあお向けになる」He lies flat on his back. は、さしずめ、自分の背中の上に自分の体をよこたえるというとらえ方で、「彼はうつ伏せになる」に至ってはHe lies on his face.ですから、顔の上に自分の体を置くと、とらえているのでしょうか。
こうなってくるとまさに異文化そのもので、英会話でこれらの表現を自在に使うなどということはわたしには到底及ばない、まさに神業です。
(言語人文学会顧問)
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