2006年 9月2日 (土) 

       

■  〈賢治の歌〉507 望月善次 みそか月、黒きまぶたも 

 みそか月
  黒きまぶたもあらはにて
  しらしらあけの
  そらにかゝれり。
 
  〔現代語訳〕晦日(みそか)の月は、黒い瞼(まぶた)もはっきりと、白白と明ける明け方の空にかかっています。

  〔評釈〕「歌稿〔B〕」の「大正五年十月より」六十三首中の四十七首目で「410歌」。初句から第三句までは、「歌稿〔A〕」においては「三日月は黒きまぶたを露はして」の形であった。「歌稿〔B〕」では、それを「あらはして」とした後、抽出歌の形とした。「みそか月」は、「歌稿〔A〕」では「三日月」とあるが、「みそか(晦日)」であるから、下弦の月となるのだろうから、「二十七日の月」のことか。「しらしら(白白)」は「しろ(白)」の母音交替形で、多く複合語に残っているとは『岩波古語辞典』の指摘。「みそか月」の輪郭に「黒き瞼」を認めるところは、空の状況に詳しい賢治らしい着眼。その着眼によって、辛うじて「作品」になろうとしている一首なのだと見た。
  (岩手大学教授)


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