2006年 9月4日 (月) 

       

■  〈賢治の歌〉509 望月善次 何か知らず不満を持てる 

 何かしらず
  不満をもてる丘丘は
  朝の緑青の氣をうかべたり
 
  〔現代語訳〕(その詳しいことは良く)分かりませんが、不満をもっている丘丘は、朝の緑青(ろくしょう)の気を浮かべています。

  〔評釈〕「大正五年十月より」〔「歌稿〔B〕」〕六十三首中の四十九首目の「412歌」。「歌稿〔A〕」では、「不満をいだく丘々は緑青の気をうかべけるかな」とあり、抽出歌では、当初第二句「朝の不満の(不満をいだく)丘丘は」であった。「緑青」は「硫黄化合物を含む屋外環境中に長期間さらされた銅の表面に形成される美しい緑色の保護性のある皮膜」で、かつては有毒だと言われた(現在は無害説有力)〔『マイペディア』〕。抽出歌では、「不満の丘丘」と「緑青」を結びつけているから、話者は「緑青」をマイナス的イメージで捉(とら)えているが、これは有毒説によるものか。「緑青」は、色の美しさから、銅屋根の着色に人工的処理もあるほどで、マイナス評価への反論も必至か。
  (岩手大学教授)



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