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黄葉落ちて
象牙細工の白樺は
まひるの月をいたゞけるかな。
〔現代語訳〕黄葉が落ちて、まるで象牙細工のような白樺は、真昼の月を頭上に戴(いただ)いています。
〔評釈〕「大正五年十月より」〔「歌稿〔B〕」〕六十三首中の五十四首目の「417歌」。初句の「黄葉」の訓(よ)みには、「こうよう」もあろうが、短歌定型五七五七七の初句に対応する字余りの点及び音感の点から「もみじ」とした(ちなみに、『新校本全集』等も「もみじ」である)。「白樺(シラカバ・シラカンバ)」は、カバノキ科の落葉高木で、樹皮を細工物とする〔『マイペディア』〕。賢治にとっても重要な樹木の一つで、『新宮澤賢治語彙辞典』は、「賢治における樺の木の表現は何種類かに分類できるが、白樺は中でも清楚(せいそ)な女性的な植物として描かれる」としている。「象牙細工のような白樺」の上に真昼の月が出ているというだけの作品だが、どこか賢治らしい雰囲気を湛(たた)えている。
(岩手大学教授)
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