2006年 9月10日 (日) 

       

■  〈賢治の歌〉515 望月善次 霜柱砕けて落つる岩崖は 

 霜ばしら
  碎けて落つる岩(いは)崖は
  陰気至極のLiparitic tuff
 
  〔現代語訳〕霜柱が碎けて落ちる岩の崖は、陰気極まりないLiparitic tuff(流紋凝灰岩)です。

  〔評釈〕「大正五年十月より」〔「歌稿〔B〕」〕六十三首中の五十五首目の「418歌」。「歌稿〔A〕」では「おつる岩崖(いはがけ)」。なお、ルビは後からの書き入れと思われる。また、「420歌」までの三首は、枠で囲んである。「Liparitic tuff(流紋凝灰岩)」については、「岩手県稗貫郡地質調査及土性調査報告書」には花巻の西方の丘陵地帯は、「白色淡灰色淡褐色……粗大ナル流紋岩ノ砕屑混有」するものとして記され、この「見場の悪い姿形や色を『陰気至極』」と歌った」のだという〔『新宮澤賢治語彙辞典』〕。短歌的には、「砕けて落つる岩崖は〜Liparitic tuff」というまとめ方や「Liparitic tuff」を「陰気至極の」と形容してみせたりして、その定型操作力は侮り難い。
  (岩手大学教授)


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