2006年 10月 2日 (月) 

       

■  〈賢治の歌〉536 望月善次 白雲よ夜の白雲よ

 しらくもよ夜のしらくもよ
  月光は重し
  気をつけよかのわるひのき。
 
  〔現代語訳〕白雲よ。夜の白雲よ。月光は重い(様子に照っています。本当に何か良くないことが起こりそうな雰囲気ですね)。気をつけなさいよ。あの「悪檜(ひのき)」に。

  〔評釈〕「大正六年一月/一九一七年」二十一首中(「二十二首中」としたのはケアレスミス/〔ひのきの歌〕)の十首目の「439歌」。「短歌定型感」の薄い一首。原因は、第三句の「月光は重し」が、二音一拍からは「月/光/は○/重/し○」と五拍となり、さらに第四句において「気をつけよ」と二音もの字足らずとなっているからである。「月光は重し」は、字義的には「月光」は「重い」ことを示しているが、もちろん一般的には「月光」に重量があるわけではないから、話者の感じている様子などを示していることになり、それは何か凶事が起こる前兆なのだとしても、それほど見当違いではあるまい。「気をつけよ」は、直接には「しらくも」に告げているのだが、話者の気持ちとも重なろう。
(岩手大学教授)


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