2006年 10月 4日 (水) 

       

■  〈賢治の歌〉538 望月善次 うすら泣く月光ガスの  

 うすらなく
  月光瓦斯のなかにして
  ひのきは枝の雪をはらへり。
 
  〔現代語訳〕ちょっと泣いているような月光が差している靄(もや)の中で、ヒノキは枝の雪を払ったのです。

  〔評釈〕「大正六年一月/一九一七年」二十一首中(〔ひのきの歌〕)の十二首目の「441歌」で、「第五日夜」四首の二首目。『アザリア』第一号には「うすら泣く 月光瓦斯のなかにして/ひのきは枝の雪を はらへり」の形で発表され、「歌稿〔A〕」においても、原則的にこの形を引き継いでいる。「うすらなく」は、『アザリア』の場合から考えても、おそらく「薄ら泣く」であろうが、「薄ら」を「名詞・形容詞」を修飾するものだとしてきたので、少し違和感があった。なお、掛かるのを、「現代語訳」では「月光」だとしたが、「ひのき」だとする考えもあろう。「瓦斯(ガス)」には、いくつかの意味があるが、ここでは「靄・霧」とした。「月光」や「ひのき」への擬人的姿勢が特徴。
  (岩手大学教授)


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